FileMaker選手権2020の結果に審査員のコメントが追加されています。
どの点が評価されたのかが解ります。
今回のレビューは番外編です。
『Dropbox賞』に3作品入賞したぴよまるソフトウェアさんから「よろしければレビューしてみてください」とのリプライを頂きましたのでやっとレビューします。
作品の中身まで見てレビューが大変なので、リプライからかなり時間が経ってしまいました。
『Dropbox賞』は作品が掲載されません。ぴよまるソフトウェアさんのサイトにあるものをレビューしています。完全アクセス権は無いので動作のみのレビューとなっています。
作品は下記からダウンロード出来ます。
また、「FileMaker Pro Scripting Book with AppleScript」というFileMakerとAppleScriptを題材にした貴重な本があるのですが、その追加コンテンツとして「FileMaker選手権2020戦記」があります。
こちらの内容も参考にしています。
今回のレビュー作品は3つです。
作品No.1 Word Color Palette
キーワードを検索すると、それに合った良い感じのカラーセットが表示されます。
システムを作る時に配色を考えるのはめんどうなので、いつも同じにしがちです。そういう時に便利そうなカスタムAppです。
作者の説明
製作期間3週間。10万例の類義語辞書をFileMaker Proにポーティングして検索キーワードを拡張する「スタークエリー」を実装。色セットと単語の組み合わせを1.4万例収録し、好きな言葉(+拡張された類義語群)で色セットを検索して「おきにいり」に保存。検索した色セットをSVGデータに着色シミュレーションし、Adobe Swatch Exchangeファイルに書き出してIllustratorやPhotoshopですぐに使えるシステムです(応募作品にはASE書き出しモジュールを含んでいません)。
対応プラットフォーム:macOS、Windows、iOS(フル機能はmacOSのみ。macOS 10.15以降推奨)
紹介動画
トップページはWebビューアを全面に出した3DなUI。文字をクリックすると画面遷移します。
プリセット検索も3D表示でかっこいい。

「ビール」で検索すると、ビールっぽい色セットが表示

ヘッダのプレビューボタンを押すとアクティブなレコードの色セットのプレビューが表示されます。

「Myパレットに保存」ボタンを押すとMyパレット画面に遷移し、カラーコードがコピーできるようになります。

総評
機能としてはシンプルですが、データの準備や凝ったUIを考えると真似できる人も少ないカスタムAppだと思います。
このカスタムAppの本質としてはキーワードを入れると良い感じのカラーセットが出来てきて、それを利用してWebデザインやFileMakerの画面のデザインに使う。
という所だと思うのですが、カラーコードをコピーする為に
検索実行
一覧表示画面
プレビュー表示画面
Myパレット登録ボタン押す
Myパレット画面からやっとコピー出来る
というステップが必要となっています。
また、Myパレット画面では検索機能や、お気に入りのカラーセットを保存する機能がありません。いくつかのカラーセットを比較して悩みたい所です。
検索実行後の一覧表示画面でカラーコードがコピー出来ればもっと使いやすくなったのではと思います。
"FileMakerのコンテストらしさ"を出して上位を狙うアイデアとしては、FileMakerのボタン設定に対応したカラーセットを出せば良かったかもしれません。
FileMakerのボタン設定は
通常
ポイントした時に表示
押したとき
フォーカス
のそれぞれにフォントカラー、塗りつぶし、枠線色と設定する項目が多く、オリジナルのボタンを作るのが面倒です。
その設定のプレビューとカラーコードをクリックしたらクリップボードにコピーされる機能があれば、かなりの開発者が「おおっ」と思ったかと思います。
作品No.2 連ジ判定
CoreMLを使った作品です。機械学習モデルがメインの作品です。
作者の説明
製作期間3時間。「戦場の絆」の公式ホームページのMS画像から機械学習モデルを作成。データベース上にドロップされた画像を「連邦軍」「ジオン軍」のどちらの機体かを判定するものです。自転車や自動車など、まったく関係ないメカの写真を喰わせて「お前の自転車ジオン軍」などと遊ぶための他愛もない作品です。
対応プラットフォーム:macOS、iOS
紹介動画
連邦軍orジオン軍が正しく判定できるかテストしました。
画面は一つです。
ゲム・カモフ
ジオン軍が連邦軍のジムに偽装したMSです。ジオン軍の目論見通り、誤認させることに成功しています。
✗判定失敗

ザクII F2型 連邦軍仕様
0083に出てきた鹵獲ザクです。
○判定成功

ガンダムGP02A サイサリス
元々は連邦ですが、デラーズ・フリートに奪取されたので最終的にはジオン・・・。判定に異論はありそうですが。
○判定成功

ザク頭Zガンダム
そもそもエゥーゴなので連邦ジオン判定できないのでは?という意見があるかもしれないですが連邦扱いで。
○判定成功

総評
ただそれだけと言えばそれだけのカスタムAppなのですが、ガノタが集まればキャッキャ出来ると思います。個人的には楽しめました。
ただ、あまりにもパッと結果が出てしまうので演出が欲しい所。写真を入れてから「分析中・・・」と分析っぽいアニメーションを1秒ぐらい流れてから表示したほうが面白かったかも。
CoreMLのconfidenceパラメータを利用して「ジオン分10%、連邦分90%」とグラフで出すとか。
作品No.3 NLP PDF Reader
紹介文からは解りにくいですが、PDFを1ページずつ画像に変換して、PDFから抽出したテキストを電話番号やメールアドレス等の要素に分類してくれます。
作者の説明
製作期間半日ぐらい。PDFの本文テキストをCocoaのサービスでメールアドレスやWeb URLなどに分解して、その要素ごとに抜き出してPDF本文の上にオーバーレイ表示・要素ごとに検索できるようにする作品です。また、各ページを画像認識して、認識結果のテキストも展開。「Volcano」で検索すると桜島の写真を見つけられます。
対応プラットフォーム:macOS、iOS
紹介動画
レビューで使用したのはFileMakerのライセンス冊子

PDFを1レコードずつ分解して画像化しています。

PDFの中のテキストを抽出してページごとに保存してくれています。

PDFの中のテキストから電話番号の要素を抽出しています。
全ての要素が完璧ではないですが、あとから検索するキーワードとしてはこれくらいで十分でしょう。

画像認識結果
"honeycomb"は蜂の巣。確かに六角形の集合体のイラストで蜂の巣っぽい。

総評
「PDFの中身まで検索したい」という要望は時々受けますが、出来ませんのでお断りしています。
PDF内のテキストを手動でテキストフィールドに貼り付ければ検索にヒットするぐらいは出来ますよとは言いますが、現実的では無い。
FileMaker業界にいると一度はお願いされたり、掲示板で見かける話題です。
そこで、このカスタムAppです。
PDFをページごとに分割して画像化してテキストを保存するだけでも凄いのに、ソコを全くアピールせずに抽出したテキストを要素ごとに分類するとか、画像認識するとかをアピールされている。
違う、そこじゃない。
作者はアピールポイントを間違っている。
この作品、3つ目な上に製作期間半日だったのであまり期待せずにレビューしていましたが、このファイルを欲しい方は多いのではないでしょうか。
技術的にはおそらくAppleScriptを使ってどうこうしていると思いますので、macOS限定なのでしょう。
しかし、Windows環境の会社でもPDF分割&テキスト抽出用端末としてMacを一台導入すれば運用可能です。分割してしまえば後はFileMakerの話ですので。
FileMakerは確かにPDFを保存出来ますし、プレビュー出来ますが中身まで検索することは出来ません。それが可能になる上に、ページ毎に画像化されるとWebのサービスへ投げることで無限の可能性があります。
アピールポイントをPDFドキュメント管理にして、
「ページ毎のテキストを抽出してページ単位での検索を実現!」というキャッチにすれば上位を狙えたのでは思います。
プラスαを加えるとすれば、閲覧されたページを記録しておいて集計が取れるとか。そうすればマニュアルの見られている部分を分析することでユーザがつまづきやすい機能を分析することも可能!というアピールも出来たかと。
まとめ
3作品の中では業者的な感覚からかもしれませんが、「NLP PDF Reader」が一番だと思います。
「FileMaker Pro Scripting Book with AppleScript」に付いてくる「FileMaker選手権2020戦記」(83ページ)からは並々ならぬFileMaker選手権への熱量を感じることが出来ますので購入してあげてください。
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